Fuocoammare (Fire at Sea)


今年(2016年)のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したドキュメンタリー映画『Fire at Sea』を紹介します。ジャンフランコ・ロージ監督は、『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち(Sacro GRA)』で2013年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞も受賞しています。

さて、今からさかのぼること2014年の秋。ロージ監督は当初は10分のショートフィルムを撮影するつもりで、地中海に浮かぶイタリアのランペドゥーザ島(Lampedusa)を訪れました。

Fuocoammare

Fire at Seaのシーン。産業は漁業と観光だそうです

ランペドゥーザ島は、面積20.2 km²(ちなみに東京山手線の内側の約3分の1、香港島の約4分の1)で人口は約5500人。アフリカに近い地理事情から、チュニジアやリビアなどアフリカ諸国の難民たちが海を渡って目指す島として知られています。この20年間でアフリカから400,000人の難民がランペドゥーザを目指し、15,000人以上がアフリカとヨーロッパの間で溺れ死んでいるそうです。

Fuocoammare

しかし、そもそもこの島は「絶景」と呼ばれる美しい観光地。近年のニュースで報道される悲惨なイメージとは違うランペドゥーザを紹介しようというのが、当初の計画だったそうです。

Fuocoammare

漁をしているところ

その過程で、たまたま監督が診察のために訪ねた現地医師(映画にも登場)との出会いがきっかけとなり、ロージ監督はランペドゥーザに住み込んで長編ドキュメンタリーの製作に取り組み、『Fire at Sea』が生まれました。

難民たちの現実を目の当たりにしてきたドクター

難民たちの現実を目の当たりにしてきたドクター

この映画から私が学んだこと。
「助けてほしい時は、まず自分がいる位置と状況を把握して、落ち着いて相手にわかる言葉で伝えなければいけない。ただ必死に『助けてー!』と訴えても、それだけでは他の人には助けようがない場合がある。」

あぁぁ。難民船がまた沈んだ。みんな死んでしまった。
みんな快適に幸せに暮らしたかったのに。なんてことだ。

沈む前に船を発見した場合も、イタリア側の負担は計り知れない。船から人々を救出し、どんどんケアやチェックをしていく。容態が悪化している人はとてもつらそうだけど、比較的元気そうな人はいろんなキャラの人がいる。彼らは収容所に隔離された後、島を離れてさらに移動します。

もちろん、遺体になって島にたどり着く人もいる。

そんな危険な賭けをしてまでヨーロッパを目指すのは、それだけお国が大変な状況だということか。あるいは仲介人の甘い言葉にのってしまったのかもしれない。

きれいごとなんて言ってられない現実。

その一方、ランペドゥーザ島には昔から普通に暮らしている住民たちがいます。漁師の家の子、サムエル君のように。

Fuocoammare

サムエル君が遊んでいるところ

自然の中で男の子っぽく遊ぶ様子や、おじさんや祖父母との交流、学校での様子は微笑ましい。懐かしい感じがする田舎暮らし。イタリア風の生活はやっぱり見栄えがよくて、字幕を読むのをつい忘れてしまう。

サムエル君のすぐ近くに別世界があることも感じられるんだけど、彼のおかげで、この重いテーマの映画に自然に入っていけます。

この映画を観た帰り道に思ったこと。
「映画を見たという感覚じゃない。自分もあの島に行って目撃してきたような気がする。」

映画タイトルのFuocoammareが何からきているか、ピンとくるイタリア通の人っているんでしょうか。答えは、映画を観ればわかります。

Fuocoammare

Fire at Sea (2016年イタリア・フランス映画)
監督:ジャンフランコ・ロージ (Gianfranco Rosi)

Special thanks to:
Doc & Film International
Rendez-Vous

香港はヤウマーテイのBroadway Cinemathequeで特別上映されました。大きい部屋がほぼ満員。さすが映画通の集まる映画館。

おまけ:
ジャンフランコ・ロージ監督と、『選挙』シリーズや『精神』『演劇』などの想田和弘監督(香港国際映画祭でもおなじみ)との対談を発見。この対談の中で想田監督に「今度一緒に映画を撮りませんか」なんて言っているロージ監督ですが、数ヶ月後に予想外な展開で『Fire at Sea』が生まれることになるんですね。
『イタリア映画祭2014』トークセッション(シネルフレ)