Vienna Boys Choir 、ショッピングモールにできた聖域

香港の主要観光エリアのひとつ、尖沙咀(チムサーチョイ)。その一角に、「K11」というショッピングモールがあります。2009年にオープンしたこのビルは、アート・デザインが好きな人にはかなり穴場のお洒落スポットです。

このK11で、この夏開催中の「香港ウィーン音楽祭(Hong Kong – Vienna Music Festival)」の一環として、ウィーン少年合唱団のミニ・コンサートをすると聞いたので行ってみました。K11にそんな舞台あったっけ?と思いつつ。

地下鉄尖沙咀駅を降りて、尖沙咀東部に向かう地下通路を少し歩くと、K11への連絡口があります、その連絡口を入ってすぐのところに、その仮設スペースがありました。

concert at K11

地下の出入り口すぐそばの隙間空間。グランドピアノとVIP用の椅子があって、その他は全員立ちっぱなし。

パラパラと集まり始めた聴衆に紛れて立ちながら、私は複雑な気持ちになってきました。こんなのあり?ウィーン少年合唱団ですよ。もちろん本物ですよ(ちなみにハイドン組)。ちょっと、このセッティングは、あんまりじゃないかい?

そんな環境でコンサートは始まりました。広東語の司会進行に沿って、同合唱団カペルマイスターで香港出身のジミー・チャン(Jimmy Chiang)氏に連れられた少年たちと、彼らと共に来港したヨーロッパの演奏家のみなさんが、入れ替わりながらモーツァルト、ブラームス、ヨハン・シュトラウスなどの小作品を演奏しました。

こんな環境で、みんな立ちっぱなしで、音響もよくなくて、まわりから常に雑音が入ってくるけど、始まった演奏がとても良いのはわかりました(そりゃそうだ!)。

この状況で、私はクラシック音楽の力を再発見しました。良い演奏がだんだんみんなを巻き込んでいく。その場にいる人たちがだんだん上品になっていく(!?)。こんな場所なのに、音楽の小さな聖域が出来ていく。

合唱団のみんなもだんだんノッてきたのではないでしょうか。男の子たちに自然な笑顔が見えました。最後は大拍手。その拍手も、コンサートの最初はヒューヒュー言いながらやるカジュアルな拍手だったけど、コンサートの終わりにはもっとクラシックっぽい拍手になっていました。

私は、最初は苦々しい思いでその場に立っていましたが、終わった時には考えが改まっていました。こういうのもいいかもしれない。普段コンサート・ホールに足を向けることなどない人が、たまたま通りかかってこの演奏を聴いたら、「コンサートに行ってみようかな」と思うに違いない。良いものは良いから。そして香港の人は良いものに素直に反応するから。

演奏しにくい環境だったろうと思うけど、これで新しい聴衆を開拓したに違いありません。これでいいのだ。こういうのもありだ。

Hong Kong – Vienna Music Festival より
2016年8月25日 ランチタイム
香港九龍 尖沙咀 K11にて
この音楽祭は、ウィーンと香港の両地で、ヨーロッパと中国の芸術交流をするそうです。